法人化と個人事業の3つの違い【マイクロ法人の始め方】

個人事業のままでいいのか、それとも法人化した方が得なのか——。

多くのフリーランスや副業を始めた方が一度は抱えるこの悩み。
特に売上が増えてきたタイミングでは、節税や信用力、社会保険など、判断要素が一気に増えます。

「法人化って何が変わるの?」「どこにメリットがあるの?」「逆に損する人もいるのでは?」——こうした疑問は、正しく違いを理解できていないことに原因があります。
そしてそれは、「個人事業と法人はまったく別物」であるにもかかわらず、手間やコストの面ばかりが先に語られてしまうことが理由です。

本記事では、法人と個人事業の“たった3つ”の違いにしぼって比較しながら、どんな人がマイクロ法人を始めるべきかを明らかにします。

私自身も個人事業から法人化を経て、マイクロ法人+個人事業の併用という実践的な運用を継続中
経験に基づいた視点から、迷いがちな法人化の判断にスッキリとした解決の視点を提供します。

目次

① 税金の違い|法人税と所得税の仕組みを理解しよう

節税が目的であれば、法人化は大きな武器になります。
特に利益が一定額を超えると、法人の方がトータルの税負担が軽くなる可能性が高いからです。

個人事業では、収入から経費を差し引いた「所得」に対して累進課税の所得税(最大45%)が課されます。
一方、法人は「法人所得」に対して一定割合の法人税(実効税率23.2%前後)
がかかります。

また、給与所得控除の活用や赤字の繰越控除など、法人特有の税務メリットも存在します。

具体例

項目個人事業主法人(マイクロ法人)
税率所得税+住民税(5%~55%)法人税+住民税(約23.2%)
控除基礎控除・青色申告特別控除など役員報酬による給与所得控除など
赤字の繰越最大3年最大10年
節税手段限定的(事業経費中心)役員報酬・退職金・社宅制度など多様

年間利益が500万円を超えると、法人化によって税負担が下がるケースが多くなります。

マイクロ法人化する最大の理由は「節税」にあるといっても過言ではありません。
ただし、設立や管理の手間もあるため、利益額や今後の事業規模を見越して判断することが大切です。

「税金の違い」は法人化を検討する最大の分岐点です。

    ② 社会保険の違い|加入義務と負担額を比較する

    法人化すると社会保険への加入義務が発生し、個人事業よりも負担額が増える傾向があります。
    しかし、これは「デメリット」だけではなく、将来の年金や保障を強化できる側面もあります。

    個人事業主は、原則として「国民健康保険」と「国民年金」に加入します。
    一方、法人の役員(=自分)は「健康保険」と「厚生年金」の社会保険に強制加入となり、会社と本人で折半する必要があります。

    このため、法人化すると社会保険料の負担が倍増する可能性がありますが、
    同時に将来受け取れる年金額が増える傷病手当金や出産手当金などの保障も厚くなるという利点も。

    具体例

    区分加入先月額保険料(年収400万円の場合の目安)保障の厚さ
    個人事業主国民健康保険+国民年金約4〜5万円基本的保障のみ
    法人(役員)社会保険(健保+厚年)約7〜8万円(会社と折半)傷病手当・出産手当・高年金

    社会保険料は高い=悪ではなく、コストと保障のバランスで考えることが重要です。
    とくに「将来の年金や手当」を重視する方にとっては、法人化は有利になる場面もあります。
    なお、マイクロ法人と個人事業を併用することで、社会保険料を抑える戦略も可能です。

    詳しい手続きやタイミングは【関連記事】をご覧ください。

    ③ 信用力の違い|取引先・融資・口座開設への影響

      マイクロ法人は、個人事業に比べて「社会的信用力」が高いと評価されやすく、特に「対法人取引」「融資」「法人名義の口座開設」で有利に働きます。

      個人事業は開業届を出すだけで始められる手軽さがある反面、企業としての「法人格」がありません
      一方、法人は法的に独立した存在であり、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)や法人番号が存在するため、社会的に明確な存在として扱われます。

      具体例

      • 取引先との契約書や請求書に法人名を記載できる
         → 信用が高まり、BtoB取引で安心感を与える。
      • 金融機関の法人口座が開設できる
         → 特にネットバンク(例:住信SBIネット銀行)は法人専用の口座提供あり。
      • ビジネスローンや補助金申請の対象になる
         → 一部の支援制度は法人限定。
      比較項目マイクロ法人個人事業主
      契約書や請求書の記載法人名義で可能個人名(屋号)
      融資・補助金対象になる制度が多い制限されることがある
      口座開設法人口座(審査あり)個人名義 or 屋号口座

      信用力の面で、マイクロ法人はビジネスの拡張性と信頼性が段違い
      法人化は、「対外的な信頼性」を得たい方にとって、大きなアドバンテージになります。

      実際に住信SBIネット銀行で開設した体験談とポイントを紹介しています。

      「信用力の高さ」が法人化の大きな理由として詳解しています。

      まとめ|マイクロ法人×個人事業の併用戦略が最適解

      マイクロ法人だけでも、個人事業だけでもない

      「法人か、個人事業か」ではなく、どちらも活用するのが最適解です。
      マイクロ法人で【信用力】【税制のメリット】を取り入れつつ、
      個人事業で【柔軟性】【シンプルな運営】を保つことで、バランスの取れた事業体制が実現します。

      この記事で押さえた「3つの違い」

      • 税金の違い
         → 法人なら経費にできる範囲が広く、節税効果あり
      • 社会保険の違い
         → 個人事業では国保+国年、法人では社会保険の加入義務。
          併用すれば報酬額で調整も可能。
      • 信用力の違い
         → 法人は社会的信用が高く、口座開設や契約面で有利

      併用戦略のメリット

      • 節税・保険コントロールがしやすい
      • 収入源・契約形態を分散できる
      • 法人・個人のそれぞれの強みを活かせる

      併用による実践戦略を網羅しています!

      併用戦略の具体例を深掘りしています。

      行動の提案

      これからマイクロ法人を始めようとしている方は、個人事業との併用を前提にした設計を考えるのが得策です。
      まずは、以下の関連記事で「設立準備」から進めていきましょう!

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