
個人事業でやっている仕事を、法人でもやっていいの?
二刀流を考え始めると、一度はこの疑問に引っかかるのではないでしょうか。
私は不動産の賃貸を、個人と法人の両方でやっています。
法人=Web制作・不動産の賃貸/個人=不動産の賃貸、という形です。
同じ「不動産の賃貸」を両方で続けていますが、税務署から問い合わせや指摘を受けたことは一度もありません。
ただ、それは「同じ事業でも何も問題がなかった」からではなく、最初から分け方を税理士と相談して決めていたからだと思っています。
この記事では、私が実際にどう分けているかを5つにまとめます。
※本記事は私の実体験と一般的な考え方をまとめたものです。
個別の判断は税理士にご相談ください。
結論:同じ事業を個人と法人の両方でやることはできる。条件は「分け方」


結論から言うと、個人事業主が法人を作り、同じ種類の事業を両方で行うこと自体は禁止されていません。
問題になりやすいのは、「その売上や経費は、個人のものか法人のものか」が曖昧になることです。
境目が曖昧だと、利益を都合のいい方へ移しているように見えてしまいます。
なので大事なのは、「やっていいか」より「どう分けるか」です。
私が実際に分けている方法は、このあと具体的に書きます。
二刀流そのものの手間やデメリットは、別の記事にまとめています。


私の二刀流:不動産の賃貸を個人と法人の両方でやっている


私は2021年に、Web制作の法人を設立しました。
不動産の賃貸を始めたのは、その後です。
きっかけは実家の土地でした(名義は父)。
土地の半分には空き家、もう半分には両親の住む家が建っていました。
- 2021年:Web制作の法人を設立
- 2022年:両親から空き家の相談を受け、解体して駐車場に。
法人の事業目的に「不動産の賃貸」を追加し、法人が父から土地を借りて駐車場として貸し出す - 2023年:両親が住まなくなり、残り半分の家も空き家に。
その家を法人の事務所として借り、本店所在地もそこへ移す。
実態に合わせて「土地の無償返還に関する届出書」を提出 - 2023年:同じ年に、父から私個人が土地を相続。
私個人から法人へ貸す形になり、ここから個人でも不動産の賃貸が始まる - 2025年:事務所にしていた家を解体し、駐車場もやめて、土地全体に法人で小さいマンションを建設
- 現在:土地は私個人から法人へ賃貸し、マンションの家賃収入は法人で受け取る
空き家の相談を受けたとき、私はまず税理士にアイデアを伝えました。
そこから、法人の事業目的に不動産の賃貸を加える形になっています。
同じ「不動産の賃貸」でも、今は個人は地主として法人に土地を貸し、法人は建物の持ち主として入居者に部屋を貸す、という役割分担です。
役割がはっきり違うので、お金の流れも分けやすい形になっています。
空き家を解体したときの経緯や助成金のことは、こちらに書いています。


二刀流にしてよかった点はこちらです。


法人を作った理由のひとつは、社会保険料でした。


同じ事業を両方でやるとき、私が分けている5つのこと


① 個人と法人の間で賃貸借契約書を交わす
私個人から法人へ土地を貸すときは、賃貸借契約書を交わしています。
自分と自分の会社の間の話なので、口約束で済ませたくなるところです。
でも、契約書があることで、地代のやり取りを「個人と法人の正式な取引」として説明できます。
② 地代は近隣の類似相場を勘案して決める
法人から私個人に払う地代は、税理士と相談しながら、近隣の類似相場を勘案して妥当な範囲で決めました。
身内の間の取引は、金額が相場から大きく外れていると、利益を付け替えているように見られやすくなります。
金額そのものはここでは控えますが、「相場を根拠に決めた」と説明できることが大事だと考えています。
③ 口座と帳簿を分ける
個人と法人で、口座も帳簿も分けています。
同じ不動産の賃貸でも、入ってくるお金と出ていくお金がどちらのものかは、口座を見れば分かる状態です。
申告は法人も個人も税理士に依頼していますが、帳簿が分かれているので、それぞれの数字をそのまま渡せます。
④ 経費を完全に別にする(按分しない)
経費も個人と法人で完全に分けていて、按分している経費はありません。
同じ事業を両方でやると、「この支出はどっちの経費?」と迷う場面が出てきがちです。
最初から分けておくと、その迷いがなくなり、説明がややこしくなる経費も生まれません。
⑤ 土地の無償返還に関する届出書を出している
両親の家を法人の事務所として借り、本店所在地を移したときに、税理士と相談して「土地の無償返還に関する届出書」を提出しています。
個人の土地の上に法人が建物を建てる形は、税務上の注意点がひとつあります。
次の章で説明します。
注意したいこと:所得の付け替えと見られないために


身内の間の取引は、金額の妥当性が問われやすい
個人と自分の会社の取引は、いわば身内同士の取引です。
地代や家賃を相場からかけ離れた金額にすると、個人と法人の間で利益を付け替えていると見られ、税務上問題になることがあります。
②で地代を相場から決めたのは、このためです。
個人の土地に法人が建物を建てるときの「借地権」
一般に、他人の土地に建物を建てると、借りる側に借地権という権利が生まれると考えられています。
権利金を払う慣行がある地域で、法人が権利金を払わずに個人の土地を借りると、その分を法人が得をしたとみなされ、課税される場合があります。
これを避ける手段のひとつが、土地の無償返還に関する届出書です。
将来、土地を無償で地主に返すことを、地主と法人の連名で税務署に届け出るものです。
私はこの届出を、法人が両親の家を事務所として借り、本店所在地を移した時点で、税理士と相談して出しています。
ただ、届出が必要かどうか、地代をいくらにするかは、土地や契約の状況によって変わります。
ここは自分で判断せず、税理士に相談するのが確実です。
顧問税理士がまだいない方は、マイクロ法人や法人化の相談ができる税理士法人もあります。
税務署から指摘を受けたことは一度もない。それは分け方を税理士と決めたから


冒頭でも書きましたが、私はこの二刀流で、税務署から問い合わせや指摘を受けたことは一度もありません。
ただし、これは「同じ事業を両方でやっても何も起きない」という意味ではありません。
私がやってきたのは、新しいことを始める前に、まず税理士に相談することでした。
- 空き家の相談を受けたときも、最初に税理士にアイデアを伝えた
- 地代は税理士と相談して、相場から決めた
- 無償返還の届出も、税理士と相談して出した
指摘がないのは、こうした線引きを最初に決めていたからだと考えています。
もちろん、これは今後も指摘がないことを保証するものではありません。
線引きは税理士と相談しながら決めた


私の税理士は、Xで知り合った方です。
マイクロ法人の事情を理解してくれていることが決め手で、法人の設立当初から顧問契約でお願いしています。
法人からのお金が個人に入る形なので、法人を作ってからは、個人の確定申告も同じ税理士にお願いしています。
なぜ最初から税理士をつけたのかは、こちらに書いています。


そもそも法人化するかどうか、いつ決めるかで迷っている方はこちらもどうぞ。


これから二刀流を始める方、個人と法人の線引きを誰かと一緒に決めたい方は、税理士への相談から始めるのがおすすめです。
よくある質問


Q1. 個人事業と法人で同じ事業をしても問題ありませんか?
A. 同じ事業を両方で行うこと自体は禁止されていません。
大事なのは、売上・経費・口座がどちらのものかを明確に分けることです。
Q2. 自分の会社に、自分の土地を貸してもいいですか?
A. できます。私も個人の土地を法人に貸しています。
私は賃貸借契約書を交わし、地代は近隣の類似相場を勘案して決めました。
Q3. 土地の無償返還に関する届出書は、必ず出すものですか?
A. 状況によります。
法人が個人の土地に建物を建てるなど、借地権が問題になる場面で検討する手段のひとつです。
必要かどうかは、税理士に相談してください。
Q4. 経費はどう分ければいいですか?
A. 私は按分が必要な経費を作らず、最初から個人と法人で完全に分けています。
迷う経費が出ないように分けておくと、申告のときも説明しやすくなります。
まとめ


個人事業と法人で同じ事業をすることはできます。
条件は「分け方」で、私は次の5つで分けています。
- 個人と法人の間で賃貸借契約書を交わす
- 地代は近隣の類似相場を勘案して決める
- 口座と帳簿を分ける
- 経費を完全に別にする(按分しない)
- 土地の無償返還に関する届出書を出す
どれも、私ひとりで決めたものではありません。
新しいことを始める前に税理士に相談する。
それが、同じ事業を個人と法人の両方で続けられている一番の理由だと思っています。

